高低差のある土地では、敷地の境や駐車場の横に擁壁が設けられていることがあります。長く住んでいると、表面のひびや、少しふくらんで見える部分が気になってくることもあるでしょう。ここでは、国土交通省が公開している宅地擁壁の解説と、住民向けの「我が家の擁壁チェックシート(案)」をもとに、擁壁の種類と、古い擁壁で見ておきたい点を整理します。擁壁が安全かどうかをこの記事で判断するものではなく、気になる点があるときの相談先も、資料の案内のとおり紹介します。
宅地擁壁とその種類
宅地擁壁とは
国土交通省のページでは、宅地擁壁を、宅地を造るときなどに土砂が崩れないよう設けるコンクリートやブロックの壁と説明しています。構造が不安定だったり、古くなって働きが落ちていたりすると、地震で倒れるなどの危険が高まり、自分の宅地や建物だけでなく隣の土地にまで影響することがあるとしています。
主な種類と見分け方
同じページは、練積造擁壁、空石積造擁壁、コンクリート擁壁などを代表的な種類として挙げています。チェックシートでは、コンクリートの擁壁を、重さで背後の土の圧力を支える重力式コンクリート擁壁と、L字形の鉄筋コンクリートの壁と底の板でできていて、底の板に載った土の重さも使って土の圧力を支えるL型擁壁に分けて説明しています。チェックシートによると、擁壁のいちばん上の部分の幅は、重力式が40cm前後なのに対して、L型は20~30cmと狭いのが見分けるときの目印になります。国土交通省によると、2016年の熊本地震や2011年の東北地方太平洋沖地震などでは、コンクリートで固めずに石を積んだだけの空石積造擁壁や、もとの擁壁の上に空洞ブロックなどを積み足した増し積み擁壁などで、多くの被害が出ました。
チェックシートで専門家への相談を勧めている形式
チェックシートは最初に、自宅の擁壁が空石積み擁壁、増積み擁壁、2段擁壁、張出し床版付擁壁のどれかに当たらないかを確かめるよう求めています。当てはまる場合は、もともと宅地の擁壁に向かない形式だとして、いま変状がなくても構造の問題を専門家に相談するよう勧めています。変状が出ている場合は、早急な対応が必要だとも書かれています。チェックの対象にしているのは、練石積み・コンクリートブロック積み擁壁、重力式コンクリート擁壁、鉄筋コンクリート擁壁の3つです。高さが1m以下の擁壁はチェックの対象から外しており、洪水や高潮、地盤の液状化などによる災害も扱っていないと断っています。
古い擁壁で見ておきたいところ
チェックシートの位置づけ
国土交通省は、こうした擁壁への備えには、自治体による変動予測調査と、適切な応急対策が大切だとして、宅地耐震化推進事業でその取り組みを支援しています。このチェックシートは、擁壁がどのくらい危ないかをおおまかに知りたい住民に向けて作られたものです。擁壁は年月とともに古くなり、雨や地震でひびが入ったり傾いたりするものの、その程度が住民には分かりにくいことが、作られた理由として書かれています。チェックで安全と出ても日ごろの点検を続けること、安全の度合いが低いと出たらさらに詳しく調べることが望ましいとも添えられています。国土交通省は、「宅地擁壁の健全度判定・予防保全対策マニュアル」も公開しており、健全度の判定や現地の状況に応じて、補修や作り直し、補強などの対策の方針を示すことを目的としています。
まわりの水の状態を見る
チェックシートでは、はじめに水抜き穴、水のしみ出し、排水の施設という、擁壁のまわりの条件を見ます。水抜き穴の項目では、穴が設けられていない場合や、穴の数が3m2あたり1か所に満たない、または内径が75mmに満たない場合が、点数の高い側に置かれています。雨のあとに擁壁の表面がいつまでも湿っていないか、水抜き穴から水がきちんと出ているか、排水の溝が壊れていないかといった点は、ふだんの暮らしの中でも目に入りやすいところです。
ひび割れ、ふくらみ、傾き
続いて、擁壁そのものの変化として、ひび割れ、前後へのずれ、目地の開き、角の部分の開き、ふくらみ、傾きや折れを見ていきます。ここでいうひび割れは、幅1mm以上のものを指します。練石積みやブロック積みの擁壁では、ふくらみの項目に、全体が前へふくらんでいる状態や、ふくらみが進んで途中の石の間に隙間ができている状態などが並んでいます。最後に、まわりの条件と擁壁の変化の点数を合わせ、擁壁の安全性を3段階で評価します。その結果が「危険性が高い」や「やや不安定」となった場合は、最寄りの自治体に相談するよう案内されています。同じ場所を年に何度か写真に撮っておくと、ひびの長さやふくらみの変化を比べやすくなり、相談するときの材料にもなります。
まとめ
擁壁には、コンクリートの擁壁、練石積みやブロック積みの擁壁、空石積みの擁壁などがあり、国の資料では空石積みや増し積みの擁壁で地震の被害が多かったことが紹介されています。国のチェックシートは、住民が自分の擁壁をおおまかに確かめるためのもので、水抜き穴や排水などまわりの条件と、ひび割れやふくらみなどの変化を順に見ていきます。気になる結果が出たときや、専門家への相談を勧めている形式に当てはまるときは、資料の案内のとおり自治体や専門家に相談してください。
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参考にした資料
各ページの内容は、2026年10月13日に確かめたものです。
この記事を書いた人

安田良平
「お客様目線でのサービス提供」がモットーのエクステリアプランナー。
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